
静岡駅の周辺おでかけガイド|家族・カップルで楽しめる歴史と芸術の街歩き

JR静岡駅の北口を出ると、現代的な街並みが広がりますが、まちの歴史を感じられるスポットも点在しています。
まず目に入るのが、駿府城公園の外堀に設置された徳川家康公甲冑プラモニュメントです。
家康公が着用したとされる金陀美具足をモチーフにした世界で唯一のプラモニュメントは、城代橋周辺で観光客や市民を出迎えています。

静岡市歴史博物館へ向かう途中に立ち寄ることで、駿府という土地の物語がより深く感じられるはずです。
静岡市歴史博物館までは、JR静岡駅から徒歩約15分。
歩きながら、現代の街並みと歴史的スポットが入り混じる静岡らしい景色が広がります。
駿府城公園のすぐそば、歴史が動き出す場所

徳川家康が晩年を過ごし、政務を執った駿府。その歴史を都市の物語として再構築する拠点が、「静岡市歴史博物館」です。
歴史博物館であることに加えて、まちの未来を描く存在としての役割とは何なのか。
そのお話を伺いました。
――駿府城公園のすぐそばという立地が象徴的ですね。
「はい。ここはまさに歴史の中心地です。館内に入るとまず目に入るのが、発掘されたままの戦国時代末期の道と石垣の遺構です。この場所に立つと、かつてここを行き交った人びとの息づかいを感じていただけると思います。」
――実際に遺構を目にすると、空気が変わります。
「ここは、過去を展示する場所でありながらも、静岡の今と未来を考える場所なんです。歴史をどう守り、どう伝え、どう次の世代につなぐか。その拠点でありたいと思っています。」
「家康と駿府」という都市の物語
――博物館の設立には、どのような目的があったのでしょうか。
「大きな柱は、『大御所家康と駿府』という都市イメージを確立することです。家康といえば江戸、という印象が強いですよね。でも、駿府は家康にとって人生の重要な舞台でした。幼少期を過ごし、そして晩年には政務を執った場所でもあります。」
――家康を語るうえで、駿府は欠かせない存在だと。
「そうですね。さらに、家康を育んだ今川氏の存在も重要です。今川義元のもとで培われた文化や政治体制が、のちの家康に影響を与えました。当館では、今川氏の繁栄も常設展示で紹介しています。単なる偉人伝ではなく、都市と人物の関係を読み解いていただきたいと考えています。」
発掘されたままの遺構が語るもの

――1階の遺構展示は、とても印象的でした。発掘されたままの状態で公開されていることにも、強いメッセージを感じます。
「1階では、発掘された遺構をできるだけそのままの形で見ていただけるようにしています。現地に残る痕跡に向き合うことで、この場所に積み重なってきた時間を実感していただけると思うんです。
整えられた展示とはまた違ったかたちで、時間の重みそのものを感じていただけるはずです。様々な形で静岡に残る歴史資料を守り、伝えていくことも私たちの大切な役割です。遺構の前に立つと、教科書の中の出来事だった戦国時代が、少し身近に感じられるのではないでしょうか。」
2階で体感する「駿府という首都」

――有料エリアの2階・3階が博物館の核だと伺いました。どのような構成になっているのでしょうか。
「2階では、家康の一生と“首都”になった駿府をテーマに展示を構成しています。家康が25年間駿府で過ごした生涯をたどるコーナーでは、家康の花押(自筆サイン)や肖像画などの資料が人となりを伝えています。
幼少期の家康を育んだ今川氏に関する資料も展示され、駿府を取り巻く歴史的背景が立体的に理解できます。
首都という言葉に驚かれる方も多いのですが、駿府は一時期、日本の政治の中心でした。その事実を、感覚として実感していただけたらと思っています。
3階では、東海道のにぎわいや城下町の繁栄を紹介しています。江戸時代の都市構造、明治維新後の徳川家と静岡の関係まで、現在につながる歴史の流れを追うことができます。」
――最後に展望ラウンジへとつながる構成も印象的ですね。
「そうですね。そして3階の展望ラウンジでは、駿府城東御門・巽櫓が目の前に広がります。晴れた日には富士山も見えます。展示で学んだ歴史が、窓の外の風景と重なって見える瞬間があるんです。」
「博物館はたのしい場所」でありたい
――週末のイベントも人気だと伺いました。
「毎週末、学芸員のわかりやすい歴史・地域のおはなし、職員やボランティアによる体験ワークショップを開催しています。事前申込は不要です。歴史は難しいと思われがちですが、本当は面白いものなんです。」
――来館者との距離の近さも感じます。
「来館者一人ひとりに敬意を持って接することを大切にしています。質問には丁寧に答える。展示だけでなく、対話を通して理解を深めていただきたいですね。リピーターの方が増えるのは、何よりうれしいことです。」
館内で終わらない体験
――博物館は館内で完結しない、と。
「はい。週末にはガイドとともに市内の歴史スポットを巡る無料ツアーも行っています。展示で得た知識を、実際のまちで確かめていただけます。」
――1階の無料エリアやカフェも、まちとつながっていますね。
「展示を見て終わりではなく、まちを歩いてほしい。それが静岡を好きになる近道だと思っています。」
展示の余韻を味わう、もうひとつの時間

展示室を出た先にあるのが、併設のカフェです。館内の静けさとはまた少し違う、やわらかな空気が流れています。
――このカフェは、どのようなコンセプトで運営されているのでしょうか。
「歴史を体感したあとに、ほっとひと息ついていただける場所でありたいと思っています。県産のお茶を使ったメニューもご用意していて、静岡らしさも感じていただける空間づくりを意識しています。」
――博物館に併設されていることに、どんな意味があると感じていますか。
「展示をご覧になると、皆さん意外と頭を使われています。歴史を読み解いたあとのひといきとして、この場所があるのは大きいと思います。」
――来館者にとって、このカフェはどんな存在であってほしいですか。
「ミュージアムカフェとして、観覧後の余韻を楽しんでいただける場所でありたいですね。お茶や甘味を味わいながら、今日見た展示のことを話したり、静かに振り返ったり。くつろげる時間を提供できればと思っています。」
こうした館内外の取り組みを支えているのが、三つの柱です。
未来へつなぐ三つの柱
――三つの柱について、もう少し具体的に教えてください。
「大きな柱は『歴史探求』『地域学習』『観光交流』の三つです。それぞれを、より具体的に深めていきたいと考えています。
まず『歴史探求』ですが、家康や今川をテーマにした企画展は今後も継続します。ただ、常設として固定するのではなく、基本展示として定期的に入れ替えを行い、その都度しっかり情報発信していきたいと思っています。何度来ても新しい発見がある場所にしたいんです。
また、資料情報のデジタル化も進めていきます。来館前後でも学べる環境を整えたいですし、市民と学芸員が直接交流できる機会も増やしていきたい。展示を見るだけでなく、一緒に探求する場にしていきたいですね。
『地域学習』については、これまでも学校団体の受け入れや「教員のための博物館の日」、出前講座、講師派遣などを行ってきました。それらは継続しながら、学校や社会が求める新しい学習ニーズにも応えていきたいと考えています。
例えば、地域で活動する人材の育成支援です。博物館が持つ知見を共有することで、地域の学びの担い手を増やしていきたい。歴史をきっかけに、地域で活躍する人が増えていけばうれしいですね。
そして『観光交流』です。1階のスペースを活用し、博物館周辺を訪れた観光客やイベント参加者の方々を館内から館外へ誘導していきたいと考えています。ここが駿府城エリアのハブになれば理想的です。
駿府城エリアの関連施設とも情報交換を行い、イベントにも積極的に参画していきます。個々の施設で完結するのではなく、地域資源を活かしながらエリア全体の活性化につなげていきたいですね。」
――教育との連携にも力を入れられているようですね。
「学校団体の受け入れや出前講座を続けながら、新しい学習ニーズにも応えていきたいですね。資料のデジタル化や、市民と学芸員が交流できる機会も増やしていきます。」
――最後に、目指している姿を教えてください。
「この場所が、静岡を誇りに思うきっかけになればうれしいです。」
歴史を知ることは、まちを好きになること

――静岡市歴史博物館は、どんな存在でありたいですか。
「過去を振り返るだけでなく、歴史を通して今の静岡を理解し、未来を考える場所でありたいと思っています。
展示を見て、まちを歩き、風景を眺める。その体験が、郷土への愛着につながっていく。駿府の物語は、まだ続いています。」
歴史を軸にまちを見つめ直す動きは、静岡の文化を担う他の施設とも重なり合います。
都市としての文化の厚みは、複数の拠点が呼応することで形づくられていきます。
もうひとつの文化拠点、静岡市美術館

歴史博物館から歩いてほど近い、JR静岡駅北口。地下道を抜けると、駅から徒歩約3分の場所に静岡市美術館があります。
歴史を軸にまちの物語を伝える歴史博物館に対し、美術館は文化を発信する都市型拠点です。静岡市美術館の方にもお話を伺いました。
――歴史博物館とはまた違う役割を担っているのですね。
「はい、静岡市美術館がめざしているのは、初めて美術館を訪れる方から熱心なファン、そして子どもからご高齢の方まで、誰もが気軽に立ち寄れる“ちょっと面白い、街の中の広場”のような美術館です。駅から近く、夜7時まで開館しているため、仕事帰りや買い物のついでに立ち寄れる利便性も魅力です。」
――“街の中の広場”という考え方は、展示や日々の活動にも表れているのでしょうか。
「展示室は約1,100㎡あり、国宝や重要文化財も展示できるよう、環境を整えています。年間を通して企画展を5~6本ほど開催しています。世界的に評価の高い芸術家の名画や国指定文化財、社会的包摂の視点をもつ絵本原画、暮らしを豊かにするデザインや工芸、現代美術まで、ジャンルにとらわれない多彩な展覧会を実施しています。
また、エントランスホールや多目的室、ワークショップ室を「交流ゾーン」と位置づけ、同時代のアートシーンの紹介や、コンサート、講演会等、様々な交流事業を開催しています。春・夏に開催する「しずびオープンアトリエ」や、未就学児を対象にした「しずびチビッこプログラム」などのワークショップも人気です。」
――地域とのつながりも感じられます。
「館内には、東海道を“ひとめ”で見渡せる漆芸作品『東海道五十三次ひとめ図』も設置されています。静岡の伝統工芸を今に伝える蒔絵師、塗師、指物師の皆さんによる2×3mの大きな作品です。」


「ロゴマークは富士山をモチーフに、重なり合う二つの円で人の輪の広がりと地域と世界を結ぶつながりを表現しています。円の重なりが生む奥行きや視点の変化には、“視ることの楽しさ”へのメッセージも込められ、館内のフォトスポットとしても親しまれています。」
新静岡駅へ、余韻をたどるもうひとつの道

静岡鉄道・新静岡駅までは、歴史博物館から徒歩約10分。
駿府城公園を抜け、まちを歩きながら向かうその道のりも、静岡の時間を感じるひとときです。
駅直結の商業施設「新静岡セノバ」5階には、静岡県内で親しまれている炭焼きレストランさわやか新静岡セノバ店があります。
展示の余韻を胸に、買い物や食事を楽しむのも、このまちらしい過ごし方のひとつです。
歴史を知り、まちを歩き、日常のにぎわいへと戻っていく。
その流れそのものが、静岡という都市の魅力なのかもしれません。
駿府を歩き、静岡を知る

静岡市歴史博物館は、過去を展示するだけの場所ではありません。
家康と駿府という物語を通して、このまちの成り立ちと未来を考える拠点です。
発掘された遺構に立ち、展示で歴史をたどり、展望ラウンジから現在の風景を眺める。
その体験は、静岡という都市の時間軸を身体で感じる時間でもあります。
そして、その歩みは館内で終わりません。
駅からのまち歩き、周辺施設との回遊、美術館で出会う現代の文化。
歴史と芸術の両輪が、静岡という都市の厚みを形づくっています。
駿府の物語は、過去のものではありません。
今もこのまちの中に息づいています。
一歩、踏み出してみる。展示を見て、景色を眺め、まちを巡る。
その体験こそが、静岡を好きになるきっかけになるはずです。
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