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【完了】【令和7年度 調査レポート】
4,000年の眠りから覚める記憶 — 加曽利貝塚・発掘調査日誌を辿る

コラム

千葉市が世界に誇る「加曽利貝塚」。ここは直径約140メートルの「北貝塚(縄文時代中期)」と、長径約190メートルの馬蹄形をした「南貝塚(縄文時代後期)」が連結した、世界最大級の貝塚です。

なぜ今、再び掘るのか? ― 第1次調査・第2地点の再検証

今年度の調査地は、南貝塚の西側に位置する「第1次調査・第2地点」です。ここは昭和37年(1962年)に調査が行われ、5体の人骨や複数の住居跡が見つかった、遺跡の歴史を語る上で極めて重要な場所です。

「一度掘った場所を、なぜまた掘るのか?」と思われるかもしれません。

昭和37年当時は、現在のようなデジタル測量や多角的な分析技術がまだ確立されていない時代でした。現代の私たちは、土層を立体的に記録する手法や、過去の記録を現代の地図上にミリ単位の精度で正しく重ね合わせる測量技術という武器を持っています。

60余年の時を経て、かつての調査では見落とされていたかもしれない「縄文人の暮らしの微かな痕跡」を最新技術で解き明かすこと。それが今回の大きなミッションなのです。

昭和37年の人骨調査風景

 

9月:「清掃」から始まる歴史の掘り起こし
調査は、現場を「発掘できる状態」に戻す環境整備から始まりました。9月17日にはテントの設営や草刈りを行い、19日には昨年度発見した遺構を再び確認できるよう、土の表面を薄く削る「清掃」という作業を進めました。
本格的な掘削が始まった9月24日には、調査区東側の面的な掘削とサブトレンチの調査を開始しました。掘り始めてすぐに次々と土器片が出土し、現場には心地よい緊張感が走り始めます。


翌日の9月25日には、土の色の違いや土器が集中して出土している様子から、それが人為的に掘削された跡である「遺構」の可能性が見えてきました。ある程度の大きさや文様が確認できる土器は、測量機械で出土位置を正確に記録してから取り上げるため、あえて一時的に土の上に残したまま周囲を掘り下げていくのです。この地道な「記録」の積み重ねこそが、科学的な調査の根幹となります。

10月:雨が教えてくれた地層の表情と、驚きの発見
10月に入ると、現場は秋の深まりとともに不安定な天候に悩まされるようになります。
雨が降り続く日もありましたが、悪いことばかりではありません。土が湿ることで色の違いが明瞭になり、地層の観察がしやすくなるというメリットもありました。逆に、よく晴れた日には、乾燥で調査区の壁が崩れるのを防ぐために水撒きを行います。遺跡の保護と安全のため、天候に合わせた細やかな管理が続けられました。

今月の調査の大きな焦点となったのが、加曽利貝塚の本領とも言える「貝層」へのアプローチです。貝層が露出している地点では、貝の分布する範囲を明らかにするため、竹串やハケなどで丁寧に土を取り除いていきます。これは気の遠くなるような繊細な手仕事です。また、貝層を含む土は大切に保存しておき、後ほど動物や魚類の骨が残っていないか精査する予定です。こうした小さな骨のかけらが、縄文人の食卓を復元する鍵となります。
 


そんな中、今月の大きなトピックとなったのは「人の歯」の発見です。現場の一角で行っていた、昭和37年度調査の「埋め戻し土」をふるいにかける作業中に出土しました。かつての調査では人骨が発掘されているため、その一部が時を超えて再び私たちの前に現れたのかもしれません。
 


また、長年現場に立ちふさがっていた大きな切り株の撤去にも挑みました。重機を使うと地層を壊してしまうため、根を一本ずつ切り進め、最後は6人がかりで搬出しました。こうした努力を経て、ようやく遺構が探し出しやすい暗褐色の土の面が整えられていきました。

11月:現地説明会開催と、姿を現した「堀之内2式土器」
11月に入ると、調査区はより複雑な形を見せ始め、縄文人の生活の痕跡がより鮮明になります。


小さな区画ごとに断面を確認しながら、慎重に遺構を探す作業が続きました。複数の遺構が重なる場所では、どちらがより古いものかを見極めるための方針を検討。その過程で、住居の床面近くと思われる場所から「石皿の一部」が出土しました。木の実の加工に使ったと思われる凹みが残っており、当時の暮らしの息遣いが伝わってきます。


そして迎えた現地説明会。たくさんの方にご来場いただきました。お披露目されたのは縄文時代後期前半の「堀之内2式」の土器です。土器はちょうど半分ほど残った状態で出土しており、説明会終了後に慎重に取り上げが行われました。土器がかぶさっていた土については丸ごと持ち帰り、今後「ふるい掛け」を行って微細な遺物を調べる予定です。


 

調査の終わり、そして未来へ
本年度の現場調査は、この現地説明会をもって無事に終了となりました。 来週以降は機材の撤収作業に入りますが、加曽利貝塚の謎を解き明かす作業は終わったわけではありません。今回得られたデータや遺物は、今後「調査速報展示」として皆様に公開される予定です。
次年度も、同じ場所でさらなる調査を進めていきます。土の下に眠る縄文の物語は、まだまだ続きます。
引き続き、加曽利貝塚の活動を温かく見守っていただければ幸いです。

 

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