
選挙の大切さを今に伝えて
―飯能市立博物館の「木製の投票箱」―

先月は衆議院議員総選挙でしたね。厳しい寒さの中、大切な一票を投じに、投票所へ足を運ばれた方も多かったのではないでしょうか?
今回は飯能市立博物館が所蔵する資料から、そんな選挙に欠かせないアイテムの一つ「投票箱」をご紹介します。

戦後しばらくは使われていた「木製の投票箱」
現在、一般的に使用されている投票箱は、ジュラルミンやアルミニウムなどの金属製で、持ち運びに便利な折り畳み式のものが主流です。しかし、今から70年ほど前までは、どっしりとした木製の投票箱が各地で使用されていました。
今回ご紹介する木製の投票箱は幅42.5cm、奥行49.0cm、高さ57.0cmで、現代のものと比べると一回り大きく感じられます。
作られた年代の詳細は分かりませんが、箱の裏面に貼られた製造者を示すプレートに「埼玉県浦和町 鈴木藤助製造」という記載があることから、浦和町が市制を施行した1934(昭和9)年以前に製作されたものであることがわかります。

「公正な選挙」への努力のつめ跡
さらにこの古い投票箱を観察すると、「公平な選挙」を追求した”努力のつめ跡”が残っており、当時の人々の選挙への誠実さが伝わってきます。
外蓋には2箇所の金具があり、それぞれ異なる鍵がかけられるようになっていました。これは1950(昭和25)年に施行された公職選挙法施行令で「外ぶたの錠は、各々異なつたものを用いること」と定められており、この決まりは現代の選挙でも守られ、公正な選挙の基盤となっています。

また、内蓋には剥がし残された紙片と複数の「割り印」の跡が確認できます。これは、投票開始前に最初の投票者が箱の中が空であることを確認する「零票確認」の後、蓋と箱をまたぐ形で紙を貼り、封印を施していた跡と考えられます。
零票確認後から開票に至るまで誰も中身に触れていないことを証明し、選挙の透明性を守るための先人たちの努力の証です。
選挙にしっかりと向き合う大切さ、今に伝える
外蓋についた二つの錠や、内蓋の封印からは公正な選挙への人々の努力を私たちに伝えてくれます。こうした想いは今も変わらず、先日の選挙でも期日前投票を含めた、長い時間の投票所の運営。深夜にまで及ぶ開票作業など、多くの人たちが「公正な選挙」を守るため一生懸命に選挙を運営していましたね。
激動の昭和の選挙を駆け抜けたこの投票箱は、選挙を公平・公正に行おうとする先人たちの努力と、選挙にしっかりと向き合う大切さを今に伝えてくれる一品です 。
【参考文献】
自治省選挙部編『選挙法百年史』(第一法規出版、1990 年)
『読売新聞』1953年3月18日(「投票箱も組み立て式で 目の回る選挙準備 東京都品川区」)


